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2017年12月26日 22時00分 発行
有馬記念レース回顧
【有馬記念レース回顧】
 好スタートを決めた時点でキタサンブラックの勝利は約束されたも同然で
あった。『競り駆ける馬が誰もいない』とかいう批判が相変わらず出てくる
訳だが、競り駆けることができないのである。それは出走馬の全てが勝利を
目標にした騎乗をしている訳であり、2着や3着を目指している訳ではない。
今回はシャケトラがキタサンブラックの直後にいたことで、『なぜ競り駆け
ない?』などと福永騎手を批判している人もいるが、福永騎手としてはこれ
以上のペースで馬を走らせると1着になる可能性が全くなくなるからである。
出るからには全馬の思いは勝ちたい訳であり、自分が競り駆けに行くことは
したくないのは当然のことである。例えるなら、マラソンでケニア勢のペー
スに付いていくか、自分のペースで走るかである。日本人選手はケニア勢の
ペースで42kmも走れない。仮にケニア勢のペースを上回る走りをすると、
日本人選手は途中で歩くだろう。それと同じで、キタサンブラックと他の馬
では、そもそも能力が違うので『競り駆ける=大敗』となるのは目に見えて
いるのである。

ハロンタイム
6.8 - 11.6 - 11.9 - 12.2 - 12.3 - 13.3 - 13.2 - 12.8 - 12.2 - 12.1 - 11.7 - 11.2 - 12.3

 勝ったキタサンブラックは、好スタートを決めてスッと先手を取る競馬を
した。パトロールVを見るとゲートの中では少しチャカ付いてはいたが、最
後はキッチリとスタートを決めた辺りは調教でビッシリ仕上げた効果かもし
れない。1周目の直線ではキッチリと折り合いも付けた競馬となり、この刻
んだラップが実に巧妙なラップであった。最初の500mが30.3秒-9
00mが54.8秒である。競走馬として完成されたキタサンブラックは、
54.8秒という気持ち早いペースで引っ張る流れを作り出しているのだが、
これは例えば3歳時に3着に敗れた時に作り出した流れは56.1秒であっ
たことからも、今年のペースは去年(54.1秒)ほどではないにしても早
いペースを作り出していると言える。
 ところが、900mを通過してから13.3-13.2-12.8と3ハ
ロン続けて一気にスローペースに落とし込んだ。実況でも『1000m通過
が61.6秒』とアナウンスがあった時、誰しも皆が『遅い』『スローペー
ス』と感じただろう。しかし、実際は遅かったのは900m-1000mの
間のわずか100mなのである。この100m間のラップタイムは『6.8
秒』であり、この実況に多くの人が騙されている。たった100mの区間だ
けで遅いと判断した人は、このレースの本質を見誤るので注意が必要であり、
本来は平均的に速いペースで引っ張られたレースだと覚えておく必要がある。
武豊騎手の恐るべき手腕とその急激なラップ差をいとも簡単にこなしたキタ
サンブラックの真の能力が多くの人にレース分析をする実力にふるいを掛け
ている。だから単純にこれだけ凄いレースであるのにも関わらず、素人にと
ってはつまらないレースにしか見えないのである。それはあまりにレベルが
高過ぎたから競馬を見る目が付いて行けていないだけなのである。
 スローに落とした3ハロンは1コーナーから丁度向こう正面に差し掛かり
100mほど進んだ地点までである。ここで他の馬たちが動かなかったのは
まだ勝負所がまだまだ先であり実際こんなところから動いて勝てる馬はいな
い。ところが、残り1000mの地点でキタサンブラックは早くも動いてい
るのである。残り1000mからの急激なペースアップは誰も想定していな
かったはずで、このペースより早く動いて勝てる訳がない。こうした大きな
緩急を付けての競馬をして最後までしっかり脚を残せるのは、キタサンブラ
ックに類い稀なスピード能力を維持できる無尽蔵のスタミナがあることが証
明されている。最後の1ハロンもラスト2ハロン目の最速11.2秒から1
秒ほどしかラップを落としていないのである。当然ながら後続はこのペース
の緩急に序盤からずっと付き合わされたのでスタミナを大きくロスしている。
そのため最後まで追い込んでも差を詰めることができないのである。おそら
くこのレースに今のレイデオロやサトノダイヤモンドがいても勝てなかった
だろう。キタサンブラックにとって最後の有馬記念は、キタサンブラックの
真の実力を証明したレースであり、天皇賞・春や秋と並びキタサンブラック
のベストバウトと言っても過言ではない厳しいレースを強い勝ち方をした有
馬記念であった。


 2着のクイーンズリングは、好スタートを決めて道中は馬群の中でジッと
我慢して脚を溜める競馬をした。本来の中山巧者ぶりとルメール騎手の手腕
を持っての2着に来たレースであったが、ルメール騎手にしては珍しく最後
の直線で外へヨレて走らせていた。戒告となっている辺り少し後味の悪い結
果になってしまったが、今のクイーンズリングの状態で2着に好走するのは
立派である。今後は繁殖牝馬として、自身を超える産駒が出てくることに期
待したい。

 3着のシュヴァルグランは、好スタートを決めたが周りが早かったことも
あり徐々に中団の位置まで下がる競馬となった。それでもこの距離で中団で
の競馬ができているように馬自身は昨年と比べてかなり成長しているのでは
ないかと思わせる内容であった。1周目の直線では中団よりやや後ろの外目
を追走して、大歓声の中でも折り合いが付いているのがこの馬の武器ともい
える。4コーナーでは手応え的には押しながらの追走となり、直線へ向いて
は先にサクラアンプルールの方が出たようにも見えたが、エンジンの掛かり
が遅いためである。エンジンが掛かってからはグイグイと伸びてはいたもの
の、外のスワーヴリチャードが内へヨレてきたことでブレーキを掛ける不利
があった。この不利は致命的で、おそらくスムーズに走れていれば2着は十
分にあっただろう。この辺りは運がなかったとしか言いようがないが、あえ
て厳しいことを言えば、末脚のエンジンの掛かりが遅い点が招いた不利でも
あると言える。今後も勝ち切れないもどかしさも所々で出て来るのではない
かと思う。

 4着のスワーヴリチャードは、懸念された通り右回りの競馬になればかな
り能力が半減する結果となった。追い切り診断や予想の段階で指摘したよう
に、結局このレースでも右手前のままで走り切ってしまった。調教では直線
へ向いて100mほど進んでから左手前へ替えることには成功していたが、
なぜレースでは左手前に替えられなかったのか?それは追い切りは競走馬の
走る練習であり、レースは本番であるからである。まず、そもそもスピード
が全く違い、馬場の違いはあれどCWで1000mを66~68秒で走る馬
でも、レース本番では1000mを58~60秒くらいで走る。スピード感
が違うことで、ゆっくり走っていれば手前を替えられても、ペースが早くな
ることで走りに集中してしまうので本来の作業を馬ができないことは多々あ
る。これが追い切り診断で常々言っている『追い切りでできないことがレー
ス本番では絶対できない』ということにも繋がる。
 最後の直線では右手前のまま走り切ろうとした。その結果、片方だけの脚
に疲れが蓄積されていくので、大抵の競走馬は疲れが溜まると手前の方向へ
ヨレて行く習性がある。今回のスワーヴリチャードの場合は右手前で走って
いたので右手前の右へ徐々にヨレて行った。結局右手前のままだから最後の
ゴール前は末脚が甘くなったのである。デムーロ騎手も直線では懸命に外へ
向かせるように修正しながら追ってはいるが、あそこまで右手前の強い馬の
場合は人間の操作で左へ寄せることは不可能だろう。結局後味の悪い結果に
なったが、ミルコ・デムーロ騎手だからあの程度の不利で済んだとも言える
し、4着までに好走できたともいえる。勝手を知らない他の騎手ならおそら
く4着も無理だったのではないかと思っている。逆に勝手を知る四位騎手な
らもう少し着順を上げられえたかもしれない。しかし、それはあくまで机上
の空論であり、ミルコ・デムーロ騎手が乗って4着であったという事実が結
果であり、今のスワーヴリチャードの実力である。

 5着のルージュバックは、このメンバーを相手によく好走できたと思うが、
この好走できた要因の一つに、キタサンブラックの強さが関係しているとみ
る。今回は最後方から直線だけの競馬に賭けた。キタサンブラックが作り上
げたペースは厳しいタフなペースであり、シャケトラやヤマカツエースなど
の位置の馬には相当厳しいペースで走らされていたに違いない。この2頭に
関してはキタサンブラックに潰されたと考えている。逆に最後方からだとキ
タサンブラックの作るペースの影響は1番小さい。それだけに自分の競馬に
徹すれば末脚を伸ばすことも可能である。これは人気薄の馬だからできるの
であり、キタサンブラックよりも劣る2番手以降の馬がやっても意味がない。
5着は立派なレース振りであった。

 11着のミッキークイーンは、後方から脚を溜める競馬をしたが末脚不発
に終わった。馬体重が前走時よりマイナス10kgと減り432kgでの出
走となった。牡馬なら小さくても力を出せるかもしれないが、牝馬の432
kgはやはりパワーという点で小さいため劣ってしまい、55kgの斤量も
微妙に応えたのではないかと思う。中山コースも合っていなかったようで東
京や京都の方が良いのだろう。
 13着のサトノクラウンも見せ場なく敗れたが、これは結果として状態よ
りも距離によるところが大きいのではないかと見る。現状は2000~22
00mでベストパフォーマンスを発揮できる馬なのだろう。時計が速すぎる
のもあまり良くない馬で、今後は雨専門になるかもしれない。

 16着のサクラアンプルールは、4コーナーでの手応えはシュヴァルグラ
ンより良く見えたくらいであった。直線へ向いて不利を受けるまでは一旦は
シュヴァルグランより先に出ようとしたが、進路が狭くなるのが見えたため
か鞍上の蛯名騎手も手綱を引いて軽くブレーキを掛けていた。そこへさらに
大きな不利を受けたために完全に止めるような競馬になってしまい16着の
最下位に敗れたが、スムーズな競馬をしていれば掲示板はあった。ひょっと
したら2着まであったのではないかと思う。G1のため次走狙い馬には指定
しないが、中山コースであれば能力はG1でも通用するものを示しているだ
けに、気は早いが来年の有馬記念に出走してくるなら注意は必要だろう。ま
た、中山記念などへの出走の際も注目が必要な馬である。天皇賞・秋も意外
と内容が良かっただけに、キタサンブラックという大きな核が抜けた今後は
ダークホース的な存在になるだろう。
          
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